
1年かけて作成した甲斐もあって優勝することができました。やった、やった。これはロ
ボットが優れているというよりも操縦者である私が優れていたからです。これはおごりではな
く経験の多い人がだんぜん有利であったということです。
ではさっそく主な対戦をふりかえってみましょう。1回戦、2回戦は身内の夢工房部員と当た
ってしまったのですが、彼等に共通していたのは機動性の悪さでした。動くボールに対して瞬時
に反応しなくてはなりません。そのためにはつるつるのアクリル板のコートとロボットとの接点
であるタイヤのグリップが重要になってきます。同じグリップをもつロボットでもある程度の重さを
持つほうが押し合いになった場合には有利です。ゴール間際の攻防では、ボールをもったまま押し切
られてしまうこともあるのです。またグリップがきくと相手にフェイントをかけることができます。
私の勝因のひとつがこれです。シュートをしようとしたときに相手がじゃまをしようと押し合いにな
ったとき、バスケでいえばピボットターンのようなフェイントをかけて相手を抜きさりシュート!と
いうのが私の得意技です。
3回戦の相手も身内でしたが、優勝候補の筆頭ということで手は抜かずに本気でやらせていただき
ました。彼女のロボットは機動性、シュート能力、経験、全てに優れていたので大変でした。彼女
のロボットのシュート能力はループシュートで、そばに近づくと私のロボットの頭上をこえてゴール
されてしまいます。かといってゴール前で守っていても頭上を越えてゴールされてしまいます。この
ような頭上を越えてシュートされては手も足も出ません。そのために開発されたのが「羽」です。ゴ
ールの高さが48センチ、ボールの直径が15センチ、つまり下33センチを守ればよいのです。
これによってシュートを防ぐことができたので、能力的にはイーブンになったのでした。いかにミ
スをしないかということが勝敗を決めるので膠着状態が続きました。延長戦に入ったら負けるとお
もったので、私はルールの裏をかいてある作戦にでました。それは最終的にボールにふれたほうが
シュートしたとみなされるので、ゴールを守る相手にわざとボールをぶつけるのです。これは危険
なかけですが、うまくいけば相手のオウンゴールとなります。この1点が決定点となり、なんとか勝
つことができたのです。
決勝戦の相手は北電でしたが、これまたロボットの機動性、シュート能力、経験が優れていました
。さらに相手のロボットのシュート能力はボールを浮かせてシュートできるので「羽」がおおいに役
立ったのですが、そのシュート力は並みではなく、羽を押し退けゴールしてしまうこともありました
。ただシュートの正確さには欠くようで、ゴールバーを越えてしまうこともありました。激闘の末、
ボールを取りに行ったら正面衝突してしまい、私のロボットはシュートを打つ腕が片方もげてしまい
、相手のロボットは腕が回らなくなってしまいました。こうなってはお互いに体当りしてシュートす
るしかありません。ペナルティーキックをもらってもへなちょこシュートしか打てないのです。さら
に時間がすぎ、ころころと転がったボールを奪いに互いに正面衝突覚悟で突っ込みました。ほんのち
ょっと私のロボットのほうが早くボールの届き、ロボットの一部に当たったボールは猛然と突っ込ん
でくる相手のロボットの脇をふらふらと転がり、ゴールに吸い込まれたのでした。それは私がシュー
トしたくてたまらなかった青いゴールだったのです。やったー!!! この瞬間に私の優勝が決まっ
たのです。
周りの者は最後のシュートは偶然だといいますがあれは狙ったんです。かくして打倒企業の夢をは
たし、私は定期試験に向けて猛然と過去問を探す旅に出たのでした。
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