10月16日(金)
「時代の流れか。。。」 その男はタバコに火を灯して、そうつぶやいた。
そうつぶやく2時間前、その男は繁華街から少しはなれたオフィス街にある会社の事務所で、今週の実績を報告書にまとめていた。 柱の時計を見上げると17:55、そろそろ仕事を切り上げないと残業となり、上司から指導がはいってしまう。 その男の会社も不況のアオリを受け、残業をしてはいけないことになっている。 そうか、今日は金曜だな その男は報告書をメールで配信するとそそくさと帰り支度をし、会社を後にした。 そう、今日はあそこへ行かなければならないのだ。 いつもは四ツ橋から西梅田でJR大阪に乗り換え、そして宝塚線に乗り換えて帰宅するのだが、その日は違った。 宝塚線ではなく環状線に乗り換え、鶴橋で近鉄奈良線に乗り換えたのだ。 そして小坂で下りると、真っ暗な空を見上げながらつぶやいた。「ICOCA,JRも近鉄線も使えて便利だな」 そしてアーケード街を目的地に向かって歩いた、力強く。 その筋は商店街が半分程度開いている状態であり、薄暗い箇所と明るい箇所がまざりあって、人生の明暗を感じさせた。 そして5分ほど歩くと、例の場所に到着した。 ・・・シャッター開いてないやん、長谷川模型。。。 「時代の流れか。。。」そう男はつぶやくと、タバコに火を点けた。 さらば小阪、もう行くことはないであろう。 さらば小阪、さらば近鉄奈良線。
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